Global Innovation with Advanced Food Technology

研究内容

独自のアルファ化技術

概要

AFTECの技術基盤は、温度制御した臼により穀物を粉砕するだけで瞬時にアルファ化穀物粉を製造するものです。本技術は他にない独自技術であり、学会でも高い評価を得ており、2017年9月には澱粉関連研究では日本最大の学会である日本応用糖質科学会より「平成29年度技術開発賞」(受賞者:西岡昭博)を授与されました。また本技術に対して山形県知事より「山形県科学技術奨励賞(受賞者:西岡昭博、受賞年:2007年8月)」が授与されています。このことからも、山形県としての本事業への高い期待が分かります。

AFTECではこの基盤技術をアルファ化米粉の製造技術として展開しますが、バイオマス材料分野やバイオマスエネルギー分野への展開も視野に入れています。アルファ化米粉を食品の分野に応用することで、米粉100%パンやクッキー、シュークリームなどのグルテンフリー食品の開発を行うことができます。また米以外の穀物をアルファ化し、食品開発を行うことも可能です。さらにこの基盤技術を木や草などセルロースを主成分とする材料に適用すれば、プラスチック材料との組み合わせによるウッドプラスチックの開発などの可能性が出てきます。セルロースのアルファ化によりバイオエタノールの製造工程における酵素糖化の効率を格段に改善できる可能性も確認されています。

AFTECでは独自の粉砕技術を米に適用することでアルファ化米粉を社会に流通させることを一つの目標としており、将来的には事業を拡大しバイオマス材料の開発やバイオエタノール市場へ参入することを目指しています。本技術はすでに、澱粉への適用については実証されており、セルロースへの適用についてはラボレベルでの確認が済んでいます。

米粉パン製造技術を開発した高分子工学の分野と、澱粉の分子構造を制御する植物育種学の連携により、米粉パン製造に適した米品種の開発研究を行うことが可能になるとともに、栄養生理学の分野と連携することで、栄養価の高い介護対応食品開発なども可能となります。

独自のアルファ化技術

詳細

一般にアルファ化米粉は、炊飯後の澱粉の分子構造を保ったまま米粉にしたものです(図1)。水を加えただけでお粥状になり、炊飯しなくてもそのまま食べることができます。

図2に示すように、アルファ化米粉の従来製法は生米を炊飯した後に急激な乾燥工程を経てから粉砕するものでした。そのため、炊飯と除水に製造コストがかかることがアルファ化米粉の価格が高くなる一因でもあります。この従来製法に対し、山形大学の西岡が開発した独自の粉砕技術「山形大学法」は温度制御した臼で粉砕することで、加水や炊飯工程を経ることもなく、瞬時にアルファ化米粉「YU-アルファ化米粉」が得られる画期的な方法です(図3参照)。

炊飯、乾燥の工程が全く必要ないため、従来製法に比べ経済性と生産効率の向上に大きく貢献できます。

図1:アルファ化米粉の分子構造図1:アルファ化米粉の分子構造

図2:従来法によるアルファ化米粉の製造法(一例)図2:従来法によるアルファ化米粉の製造法(一例)

図3:「山形大学法」によるアルファ化技術(非晶化技術)の概要図3:「山形大学法」によるアルファ化技術(非晶化技術)の概要

食品への応用

図4はYU-アルファ化米粉の応用技術によるグルテンフリー食品の開発例です。2001年に拠点代表者・西岡は、アルファ化米粉による粘度制御技術により世界に先駆けて、小麦粉を一切用いない米粉100%による製パン技術を開発しました。

この開発の特徴の一つは、プラスチックの成形加工技術を食品加工に応用した点です。また、YU-アルファ化米粉による粘度制御技術を応用することで、グルテンフリーのシュークリーム、コロッケ、焼き菓子の開発に成功しました。さらに、この技術は乳を全く用いない米粉ソフトクリームにも応用できることを示しました。

図4:YU-アルファ化米粉による粘度制御技術を応用したグルテンフリー食品の開発例図4:YU-アルファ化米粉による粘度制御技術を応用したグルテンフリー食品の開発例

関連論文・特許(代表的なものを抜粋)

  • A. Nishioka et al., Starch/Stärke, 62, 475-479(2011).
  • 特許第4767128号「α化穀粉の製造方法及び製造装置」特許権者: 西岡昭博
  • 特許第5769053号「米パン生地、米粉パンおよび米粉パンの製造方法」特許権者: 西岡昭博
  • 特許第5503885号「アルファ化デンプン粉およびその製造方法ならびに該アルファ化デンプン粉を用いたプラスチック添加剤およびコンポジット材料」特許権者: 西岡昭博